1980年代に予想されたコンピューター社会を答え合わせする
公開日 2026年10月9日最終更新日 2026年10月9日

| 予測者 | 通商産業省、アルビン・トフラー、電電公社ほか |
|---|---|
| 予測された年 | 1980〜1984年 |
| 予測の対象 | 情報化社会 |
| いまから見た総括 | 分野によって分かれた |
| 当時の背景 | 1980年代の日本は、国が主導して「コンピューターの未来」を描いた。方向性は当たったが、国が用意した具体的な仕組みの多くは、民間のインターネットに置き換わった。 |
当時の予想
1980年代の予想は、国の計画と、民間の構想に分かれる。
通商産業省は、1982年に「第五世代コンピュータ計画」を始めた。論理型言語で動く並列の推論マシンを作り、1秒に1億〜10億回の推論を目指す、10年の構想だった。電電公社は、1984年から、東京の三鷹・武蔵野で「INSモデルシステム」の実験を行い、ホームバンキングやホームショッピングを試した。1984年11月には、ビデオテックスの「キャプテンシステム」が商用化された。
民間では、アルビン・トフラーが1980年に『第三の波』で、工業社会から脱工業社会への移行、在宅勤務(「電子の小屋」)、消費者が生産にも関わる「プロシューマー」を論じた。特定の年を対象にした予測ではない。
誰が予想したのか
通商産業省(第五世代コンピュータ計画)、電電公社(INSモデルシステム、キャプテンシステム)、未来学者のアルビン・トフラー。
いつ予想されたのか
第五世代は1982年、トフラーは1980年、INSの実験は1984年、キャプテンは1984年。
当時の社会背景
1980年代は、パソコンが家庭や職場に入り始め、日本の産業が世界で存在感を高めた時期だった。次は「情報」が産業の中心になる、という見方が強かった。
なぜその未来が予想されたのか
電話回線とテレビ、コンピュータを組み合わせれば、家庭にサービスを届けられる。国が仕組みを整えれば、新しい産業が育つ、という考え方があった。
実際にはどうなったのか
- 第五世代コンピュータ計画: 1982年から1994年まで続き、費用は約570億円(約3.2億ドル)。並列推論マシン(PIM)などを作ったが、専用の並列ハードは、汎用のワークステーションに追い抜かれ、商業的には失敗とされる。終了時期は、資料によって1992年とする記述もあり、食い違う。
- キャプテンシステム: 1984年11月30日に商用を開始したが、1996年に情報センターが運用を終え、2002年3月31日にサービスが終了した。専用端末と回線料の高さ、情報の乏しさ、パソコンとインターネットの普及が要因とされる。
- パソコン通信: 1995年に商用の利用者は約300万人まで伸びたが、2006年3月31日にNIFTY-Serveのパソコン通信が終了した。
的中した部分
「情報や知識が価値の中心になる」「在宅で働く」「通信を使った家庭向けのサービスを使う」という方向性は、当たっている。INSが試した、ホームバンキングやホームショッピングは、いまの形で日常になった。
外れた部分
国が用意した専用の端末と網(キャプテン)や、専用ハードによるAI(第五世代)は、普及しなかった。
想定されていなかった未来
汎用のパソコンが安くなり、WWW(ウェブ)が登場した。パソコン通信は、繁栄したあとに、インターネットに置き換わった。
なぜ違いが生まれたのか
専用のしくみは、普及に時間がかかった。そのあいだに、汎用の機械と、誰でもつなげるインターネットが、先に広がった。
そこから次の未来を考える
では、次はどうなる? 1990年代に、インターネットは何が当たり、何が外れたのか。
この記事で確かめた予測
| 予測内容 | 予測者 | 予測年 | 対象年 | 結果 |
|---|---|---|---|---|
| 並列推論マシンで1秒に1億〜10億回の推論を目指す(10年計画) Wikipediaによる。専用ハードは普及せず。終了年は資料によって食い違う | 通商産業省(第五世代コンピュータ計画) | 1982 | 1992 | 外れ |
| 脱工業社会への移行、在宅勤務、プロシューマー 在宅勤務や、情報が価値の中心になることは実現。個別の実績の数字は未確認 | アルビン・トフラー『第三の波』 | 1980 | (年の指定なし) | 一部的中 |
| 家庭でのホームバンキング・ホームショッピング 実験の内容は総務省の白書による。いまはインターネットで実現 | 電電公社(INSモデルシステム) | 1984 | (年の指定なし) | 的中 |
| ビデオテックス「キャプテンシステム」の商用化 2002年3月31日にサービス終了 | 日本電信電話公社ほか | 1984 | (年の指定なし) | 外れ |
出典・資料
では、次の未来は?
では次は? 1990年代に、インターネットは何が当たり、何が外れたのか。
過去の予測は、公開されている資料に基づいて紹介しています。出典は「出典・情報源について」の方針に従って示しています。
