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石油はいつなくなると予想されてきたのか

公開日 2026年10月9日最終更新日 2026年10月9日

イラスト: 石油はいつなくなると予想されてきたのか
予測者M・キング・ハバート、ローマ・クラブ、石油会社・国際機関ほか
予測された年1956〜2003年
予測の対象石油の生産のピークと枯渇
いまから見た総括分野によって分かれた
当時の背景「石油はまもなく尽きる」という予想は、何度も繰り返された。米国の生産のピークは当たったが、世界の「枯渇」は起きず、むしろ需要のピークが議論されている。

当時の予想

1956年、地質学者のM・キング・ハバートは、米国本土48州の原油生産のピークを、究極可採量を1,500億バレルとすれば約1965年、2,000億バレルとすれば約1970年と予測した。世界については、約1.25兆バレルを前提に、約2000年のピークを予測した(論文の再掲ページによる)。

1972年のローマ・クラブ『成長の限界』には、石油の資源表がある。年平均の消費の伸び3.9%を前提に、既知埋蔵量が「31年」(消費が一定の場合)、「20年」(指数的に伸びる場合)、埋蔵量が5倍なら「50年」もつ、という指数である。これは「いつ枯渇する」という予言ではなく、条件つきの試算である。

米国エネルギー情報局(EIA)がまとめた予測の一覧(Wikipediaに再掲)には、1972年のEssoが約2000年、同じ年の国連が2000年まで、1974年のハバートが1991〜2000年、1976年の英エネルギー省が約2000年、1979年のShellが2004年までに頭打ち、などが並ぶ。2000年代には、2001年にデフェイズが2003〜2008年、2003年にシモンズが2007〜2009年のピークを予想した。

誰が予想したのか

地質学者のハバート、MITのチームによるローマ・クラブの報告書、石油会社(Esso、Shell)、国連、英エネルギー省、石油地質学者(コリン・キャンベル、ケネス・デフェイズ、マシュー・シモンズなど)。

いつ予想されたのか

ハバートは1956年。ローマ・クラブは1972年。ほかは1970年代と2000年代。

当時の社会背景

1970年代は、第1次オイルショックの時期で、石油の供給が不安定になり、資源の有限性が強く意識された。2000年代は、原油価格が上がり、「ピークオイル」が議論された。

なぜその未来が予想されたのか

石油は、生成に長い時間がかかる有限の資源である。その埋蔵量と、増える消費を並べれば、いつか尽きる、という単純な計算が成り立つように見えた。

実際にはどうなったのか

  • 米国の原油生産(EIA、日量・千バレル): 1970年は9,637で、1960年代の最高。その後に減り、2008年に約5,000まで落ちた。
  • ところが、水平掘削と水圧破砕(シェール)で、2018年に10,972、2019年に12,335と、1970年の水準を超えた。2025年は13,662(EIA)。
  • 世界の確認埋蔵量は、約1.7兆バレルとされる(EIAは約1,720、BPの統計レビュー2021年版は1,732.4、OPEC年報2025は1,566.9。出典により、最大で約175の差がある)。埋蔵量は、技術と価格で変わる「経済的に取れる量」である。
  • 世界の石油消費(Energy Institute、2025年): 前の年より1.3%増え、日量約1億300万バレル。IEAは、2024年の中期見通しで、需要は2030年までにピークを迎えると述べている。
  • 電気自動車(IEA): 2025年の販売は2,000万台を超え、新車の約4台に1台。EVが2025年に置き換えた石油は日量約170万バレル(世界の消費の約1.7%、この記事での計算)。2026年は、中東の供給の混乱で、需要が一時的に減る見通し(IEA 9月の月報)。

的中した部分

米国の生産が、1970年ごろにピークを迎えるというハバートの予測は、予測の幅の端(1970年)で当たった。その後、長く減ったことも、予測どおりだった。「石油の増産は、地質と価格で制約を受ける」という考え方も、実際の動きを説明した。

外れた部分

世界の石油が、2000年前後にピークを迎える、という予測(ハバートの世界の予測、1970年代の機関の予測)は、実現しなかった。2025年の消費は、まだ増えている。2000年代のピークオイル論(2003〜2010年ごろ)も、この記事で確認した範囲では、当てはまらない。

『成長の限界』の「20年」「31年」を、枯渇の年と読むのは誤りである。確認埋蔵量は、その後も増えた。

想定されていなかった未来

シェール革命による米国の増産(2008年の約500万から、2025年の約1,366万へ)、カナダのオイルサンドやベネズエラの重質油が埋蔵量に加わったこと、そして、需要側からの「ピーク」論(電気自動車と政策)が出てきたこと。

なぜ違いが生まれたのか

「残りの量」は、固定された数字ではなく、価格と技術で変わる。供給が尽きる前に、需要が先に頭打ちになるかもしれない、という筋書きは、1970年代の予想には含まれていなかった。

そこから次の未来を考える

では、次はどうなる? 石油の需要は、いつ頭打ちになるのか。

この記事で確かめた予測

予測内容予測者予測年対象年結果
米国本土48州の原油生産のピークは、約1965〜1970年
実績のピークは1970年(EIAの系列で、日量9,637千バレル)。予測の幅の端
M・キング・ハバート19561970的中
世界の原油生産のピークは、約2000年
Wikipediaに再掲された論文の数字による。2025年の消費は、まだ増えている
M・キング・ハバート19562000外れ
世界の石油生産が、2000年前後にピークを迎える
EIA作成の一覧(Wikipediaの再掲)による二次情報。2025年の消費は、2000年の水準を上回っている
Esso、国連、英エネルギー省ほか1972〜19792000外れ
石油の既知埋蔵量は、「31年」「20年」「50年」もつ(消費の伸び率の条件による)
条件つきの指数であり、予測ではないとする見方もある。確認埋蔵量は、その後に増えた
ローマ・クラブ『成長の限界』1972(枯渇年の予言ではない)判定不能
世界の石油生産が、2003〜2010年ごろにピークを迎える(ピークオイル論)
この記事では、世界の生産量の推移そのものは確認していない。2025年の消費が増えていることによる評価
デフェイズ、シモンズ、キャンベルほか2001〜20032010外れ

出典・資料

  1. Nuclear Energy and the Fossil Fuels(再掲)(M. King Hubbert(Resilience.org)、1956年)
  2. Hubbert peak theory(Wikipedia)
  3. The Limits to Growth(Wikipedia)
  4. The Limits to Growth(Club of Rome)
  5. Peak oil(予測の一覧)(Wikipedia)
  6. U.S. Field Production of Crude Oil(年次)(米国エネルギー情報局(EIA))
  7. List of countries by proven oil reserves(Wikipedia)
  8. Slowing demand growth and surging supply put global oil markets on course for a major surplus this decade(IEA、2024年)
  9. Global EV Outlook 2026 (Executive summary)(IEA、2026年)
  10. Oil Market Report - September 2026(IEA、2026年)
  11. Energy Institute Statistical Review 2026(要約)(DieselNet、2026年)

では、次の未来は?

では次は? 石油の需要は、いつ頭打ちになるのか。

過去の予測は、公開されている資料に基づいて紹介しています。出典は「出典・情報源について」の方針に従って示しています。

1970年代の未来予想