1960年代に描かれた21世紀の暮らし。どこまで実現した?
公開日 2026年10月9日最終更新日 2026年10月9日

| 予測者 | カーン&ウィーナー、アーサー・C・クラーク、アイザック・アシモフほか |
|---|---|
| 予測された年 | 1960年代 |
| 予測の対象 | 2000年前後〜2014年 |
| いまから見た総括 | 分野によって分かれた |
| 当時の背景 | 1960年代に描かれた未来の暮らしのうち、コンピュータと通信に関するものは、おおむね実現した。空飛ぶ台や気候の制御など、それ以外の分野は、実現していない。 |
当時の予想
1967年、ハーマン・カーンとアンソニー・ウィーナーは、『The Year 2000』で、20世紀の最後の3分の1で起こりそうな、技術革新の一覧を示した。その中には、家庭・企業向けの従量制のタイムシェアコンピュータ(項目75)、家庭用コンピュータ(84)、安価な家庭用のビデオ録画再生(70)、会議用のテレビ(90)が入っている。一方で、個人用の空飛ぶ台(69)、天候・気候の一部の制御(31)も挙がっている(転記ページによる)。
1964年、アーサー・C・クラークは、BBCの番組で、通信衛星で誰とでもすぐにつながり、ロンドンでもタヒチでも仕事ができ、通勤は不要になる、という趣旨の未来を語ったとされる(二次資料による。放送日や原典は未確認)。同じ1964年、アイザック・アシモフは、ニューヨーク・タイムズに、2014年の万国博を想像した記事を書き、通話が映像つきになる、ロボット頭脳をもつ車が自動で走る、などと予想した(原文は未確認で、二次資料による)。
1970年には、カーンが『The Emerging Japanese Superstate』で、日本のGNPが2000年ごろに米国並みになるという趣旨の予想を示した(Wikipediaの記述による。1970年刊のため、1960年代の議論の延長として扱う)。
誰が予想したのか
未来学者のハーマン・カーンとアンソニー・ウィーナー、SF作家のアーサー・C・クラークとアイザック・アシモフ。
いつ予想されたのか
カーンとウィーナーは1967年、クラークとアシモフは1964年、カーンの日本論は1970年。
当時の社会背景
1960年代は、日本が高度経済成長の最中で、1964年の東京オリンピック、1970年の大阪万博に向かっていた。宇宙開発とコンピュータの時代の始まりでもあった。
なぜその未来が予想されたのか
工業生産と科学技術が、生活を大きく変えるという期待が強かった。通信衛星やコンピュータが、仕事や暮らしを変えるのは、自然な連想だった。
実際にはどうなったのか
- テレワーク: 国土交通省の令和7年度調査(2026年3月24日公表)では、直近1年間のテレワーク実施率は全国で16.8%(前年度比+1.2ポイント)、雇用型のテレワーカーは25.2%。
- スマートフォン: 総務省の2024年調査(8月時点)で、世帯の保有は90.5%。
- 予測の当たり具合の検証(Albright、2002年): カーンとウィーナーの100項目のうち、適切な時期に実現した割合は、コンピュータと通信は約8割、それ以外の分野はいずれも5割未満。
- 日本の経済: 2025年の名目GDPは、日本が約4.44兆ドル、米国が約30.77兆ドル(IMFの統計に基づく)。カーンが示した「2000年ごろに米国並み」は、実現していない。
的中した部分
遠隔勤務と携帯の通信(クラーク)、映像つきの通話や自動運転(アシモフ)、家庭用コンピュータ、家庭用のビデオ録画、会議用のテレビ(カーンとウィーナー)は、いずれも実現した。
外れた部分
個人用の空飛ぶ台、天候・気候の制御は、実現していない。カーンの日本のGNPの予想も、大きくずれた。
想定されていなかった未来
スマートフォンが、電話、カメラ、決済、インターネットの端末を兼ねる形で現れたことは、1960年代の予想にはなかった。個人のインターネット利用の目的は、「SNS」が最も多く、81.9%に達する(総務省、令和6年調査)。
テレワークも、予想とは違い、パンデミックをきっかけに急に広がり、その後に一部が戻る形になった。
なぜ違いが生まれたのか
通信と計算は、小さく、安くする技術の進歩が、直線的に続いた。空を飛ぶことや気候の制御は、物理や安全の壁が高く、技術の進歩だけでは進まなかった。
そこから次の未来を考える
では、次はどうなる? 1970年代に描かれた「未来の都市」は、どこまで実現したのか。
この記事で確かめた予測
| 予測内容 | 予測者 | 予測年 | 対象年 | 結果 |
|---|---|---|---|---|
| 家庭・企業向けの従量制のタイムシェアコンピュータ、家庭用コンピュータ、家庭用ビデオ録画再生 Richardson氏の転記ページ(Table XVIII)による | カーン&ウィーナー『The Year 2000』 | 1967 | 2000年前後 | 的中 |
| 個人用の空飛ぶ台、天候・気候の一部の制御 「起こりうる革新の一覧」であり、確定した予言ではない | カーン&ウィーナー『The Year 2000』 | 1967 | 2000年前後 | 外れ |
| 通信衛星などで世界とつながり、遠隔で働けて、通勤は不要になる 二次資料による。放送日や原典は未確認。通勤が不要になったわけではない | アーサー・C・クラーク(BBC) | 1964 | (年の指定は、ほとんどない) | 一部的中 |
| 通話が映像つきになる。ロボット頭脳をもつ車が自動で走る 原文は未確認。映像通話は実現。自動運転は限られた範囲 | アイザック・アシモフ(NYT) | 1964 | 2014 | 一部的中 |
| 日本のGNPが、2000年ごろに米国並みになる Wikipediaの記述による。1970年刊 | ハーマン・カーン『The Emerging Japanese Superstate』 | 1970 | 2000 | 外れ |
出典・資料
- The Year 2000(転記ページ)
- Retro-futurism: Arthur C. Clarke's predictions from 1964
- Asimov's Predictions from 1964: A Brief Report Card
- In 1964, Isaac Asimov predicts what the world will look like today
- What can technology tell us about the future?(Albright)
- 令和7年度 テレワーク人口実態調査
- 令和6年通信利用動向調査の結果
- Herman Kahn
- 名目GDPの国別ランキング(IMFの統計に基づく)
では、次の未来は?
では次は? 1970年代に描かれた「未来の都市」は、どこまで実現したのか。
過去の予測は、公開されている資料に基づいて紹介しています。出典は「出典・情報源について」の方針に従って示しています。



